呼吸器官について
ポリプテルスは魚なので当然、鰓で呼吸をする。
が、空気呼吸もする。
魚だけど直接空気を吸って呼吸することが出来るのだ!
鰾(浮袋)が肺としての機能を備えており
鰾は2つ分かれた構造になっている。
しかし肺としての機能は不十分のようで空気呼吸には
それ程依存しているわけではなさそう。
画像じゃわかり難いけどポリプテルスの浮袋 (画像中央の透明のピンク色のものとその下、体後方まで伸びている薄いピンク色のもの) 浮袋は2つあり 一つは(薄いピンク色のもの)総排泄肛まで長さがあり もう一つは(透明のピンク色のもの)その半分程度の長さがある 浮袋には血管が多く張り巡らせれおり肺の役目をしている また、浮き袋は口にはつながっておらず、頭部にある穴(第二の鰓蓋とでもいうかのか)で空気を取り入れるようになっている。 |
そしてもう一つの呼吸器官として幼生期にのみに見られる
『外鰓』と呼ばれる呼吸器官がある。
外鰓とは両性類によく見られる器官で
水中で剥き出しになっている鰓のようなものだ
口を介さずに直接水中の酸素を取り込むことが出来るようなっている。
幼生期にしか見られない器官なので
これが消失するということは… ふ。オレもオトナになったな!
と言うことではないので注意が必要だ。
この器官は成長以外に
ポリプテルスの栄養状態や飼育環境によって消失する時期が変わってくる。
他の魚に喰いちぎられて消失することもあるので
外鰓がないからと言ってオトナになったとは限らんのだ!
この子供証拠的な外鰓。
実は早い段階で失っても生きていくうえでは特に問題はないみたいだ。
外鰓を失っても平気?と言うことは…
呼吸器官としてはそれほど頼ってはいないのかもしれない。
あくまで補助的な役割としての器官と思われる。
溶存酸素の少ないときにこそ外鰓に頼るのだろう。
だからと言って飼育する際にわざわざ酸欠状態にする必要はない。
外鰓(がいさいと読む) 鰓蓋の上あたりにちょこんとくっ付いてる 種類によっても消失する早さが違う |
外鰓は栄養状態が良いとふっさふさになる |
ポリプテルスは呼吸器官を三つも持っていて
ちょいと卑怯な気もするが…
それには訳があるのだ。
三つも持たざるを得なかった理由が…ッッッ!!!
恐るべきは自然淘汰圧の物語がそこにはあったのだッ!
四億年程昔の話。
植物が地上に進出した大森林時代…
20㍍にもなる大木に進化した植物たち…
その植物群から生じる大量の落ち葉。
水中に積もって腐敗し浅い水中が酸素不足に陥ってしまった。
この酸素欠乏状態に適応すべく
当時の多くの魚類が鰓呼吸以外に
直接空気中の酸素を取り込めるよう肺機能を発達させていった…
ポリプテルスの呼吸器官はこの水中酸素欠乏時代の名残なのだ。
四億年前の肺を今の時代も使っている魚は他にもいる。
ハイギョはあまりにも有名…
他にも鰾になりかけてはいるものの肺機能を失っていない魚達…
チョウザメ、ガー、アミア、ナギナタナマズ、パントドン、ピラルクなど…
どいつもこいつもが古代魚と呼ばれる魚だ。
ちなみに鰾は肺から進化したものであって鰾が肺に進化したわけではい。
最初に肺機能を持つものが現れたのだ。
パントドンも肺機能の浮袋を持っている |
肺機能をもった多くの魚はその後、陸上に進出した…
と言う訳ではなく、むしろ多くの魚は遊泳器官を発達させて
海などの溶存酸素の多いところに生活の場を求めていく…
ここで肺機能は廃れていき、現存するほとんどの魚は鰓呼吸に頼ることになる。
肺を持ち、陸上に生活の場を求めたのは
泳ぐ能力を発達させることが出来なかった魚達だ。
泳ぐ進化のタイミングを逃したのか
もともと泳ぎに適応するだけの能力を持ち得なかったのか…
どちらにせよ、自ら望んで陸上に進出したわけではなく
溶存酸素が少なくなる、水質は悪化する…
もしくは水そのものがなくなるなど…
水底を鰭で這い回って暮らしていたような魚が仕方なしに
陸上を足のような鰭と肺を駆使して新たな水場をさ迷い求めていた…
積極的な精神の持ち主ではなかったらしい。
やがて永遠にも近いほどに気の遠くなる年月を経て
陸上を支配していくことになるのだが… それはまた別の物語。
そして今、肺呼吸の機能を持つ現生の魚は…
ポリプテルスは…
陸上への進出を選ばず、大海への進出を選ばず…
止まる進化を選び、4億年滅びなかった魚なのだ。