活き餌




活餌、生き餌とも言われる。
文字通り生きている餌のこと。
自然の中ではポリプテルスが食べるものは生きている小動物が多いと思う。
なので活き餌はとても喰い付きが良い餌だ。
何よりも生きているということで栄養が新鮮である。

活き餌そのものに様々な餌を与えることで活き餌の栄養を強化したり
足りない栄養素を補うことも可能で
活き餌のみでも終生飼育が出来ると言われるほど万能な餌だ。
ポリプテルスが食べる活き餌には魚類、甲殻類、虫類などがある。
魚類では金魚やメダカ等が活き餌として売られているので入手しやすい。
甲殻類ではスジエビが釣り餌として釣具屋さんで売られている。
虫類はヨーロッパイエコオロギ、フタホシコオロギ、ミールワーム、ジャイアントミールワーム等。

活き餌は活きているのだから当然
活き餌を飼育するスペースや手間が必要になるし
活き餌の状態ではポリプテルスに病気がうつる可能性もある。
購入していきなり餌として水槽にドボンするより
ある程度育てて栄養価を高めたり
病気や寄生虫の有無の確認作業をするなど
一手間は是非に加えたほうが良い。
みんなだってガリガリに痩せて病気になった家畜よりも
健康でぷりぷりに太った家畜を食べたいでしょう?
活き餌を飼育するのは手間がかかって面倒だけど
ポリプテルスを大きく育てるには必要不可欠と言われているし
拒食した場合にも活き餌を与えることで治る可能性は非常に高い。

とてもオススメしたい餌ではあるのだけども… 
問題がある。
とても大きな問題が…
 
あくまで自分自身が感じた問題なので
自分の価値観、考えを誰かに押し付けるつもりなんてない。
その問題とは餌だけど『生きてる』と言うこと。
果たして生きたままポリプテルスに食べさせてしまっても良いのだろうか?
と、言うこと。

最近の研究では魚にも痛みを感じる受容体があるらしい。
つまり、餌とはいえ生物に苦痛を与えるのはどうなんだろうか?ってことだ。
動物福祉ってのがあるんだけどアニマルウェルフェアとも言って
主に家畜に対して使われる言葉。
人が動物を利用することを前提とした人の主観からの考えで
動物愛護とは違う。

利用する生物には与えられるべき五つの権利があり
①餌と水が十分に与えられているか?
②休息する場所や悪天候などから身を守る場所は与えられているか?
③健康を維持できるように、また無用な痛みを感じたり怪我をしないように配慮されているか?
④正常に行動できる環境を与えられているか?
⑤怖れや苦しみを避けられるか?
この五つの権利が飼育動物を飼う場合に守られなければいけない
と言う事なのだが…

物事というものはそう簡単ではないね。
ポリプテルスは自然では生きた獲物を食べてるわけで
それが『正常な行動が出来る環境』だ。
と言うことは『活き餌』与えなければいけないことになる。
一方で活き餌になる生物の視点から考えれば
②③④⑤の権利を何一つ守ることが出来ない。
完全に矛盾しとるやん…

生物飼育とは、そう単純なものではないからね。
矛盾をなくしたいなら最初から何も飼わなければよい… 極論だけど。
分かっていても理屈はそうでも、それでも僕はポリプテルスを飼いたい…
動物福祉の考えそのものは間違ってはいないと思うけど
完璧に守ることも不可能に近いので
ある程度の指標くらいに思うことにしている。

動物福祉の考えを知ってからはあまり活き餌を使わなくなった。
『あまり使わなくなった』だけで実際にはかなり良い餌なので
『どうしても必要になった場合』は使っている。

そこで…
自分なりに動物福祉を出来る限り守る活き餌の使い方を考えてみた。
まず、○○漬けって与え方を出来るかぎりしないようにした。

○○漬けとは…
水槽に活き餌となる魚類を大量に泳がせて常にポリプテルスが活き餌を食べれる状態にする給餌方法。

この方法だと②③④⑤を守ることが出来ない。
場合によっては活き餌に餌を与えずに行われることもあると思うので①すら守れない。
○○漬けって給餌方法はこまめに給餌しなく良いので飼育者側はラクでいいんだけどねぇ…
とくに幼魚時期は…

活き餌を飼育している水槽から一匹ずつ掬って与えるという
オーソドックス?なやり方も出来る限りやらない。
これも②③⑤が守れない。
しかし、それでは活き餌を与えることが出来ないじゃん!
となってしまうので…
そうれじゃあどうやって与えるのかと言うと?
飼育者自身が出来る限り苦痛を感じさせずに
『素早く命を奪って』から与えればいい。
これなら①②③④はそれなりに守れるハズ。
生きながら食われるという恐怖を感じることもないし
ポリプテルスに襲われる恐怖もない。

結局のところ命を奪うことにはなるのだけど
長い間恐怖や苦痛を与えるよりは
一瞬で命を奪ったほうがまだマシだろうと思うのだ…
ホント自分勝手な考えだけど。

もちろん、活き餌は生きて動くからこそポリプテルスの喰い付きが良いのだし
狩猟本能?があるのならそれも満たされよう。
動かなくなった活き餌ではその利点が一切生かされない。
それと、逃げ惑う活き餌を追いかけて
捕食するというシーンを見ることも出来ない。

それなら冷凍餌と何も変わらないやんか!
って思うけど鮮度が圧倒的に違うので
栄養素はほとんど損なわれていないハズ。
…魚に痛みを感じる受容体があることは分かったけど
その痛みをどの程度苦痛だと感じているのかは
実のところ、まだよく分かっていないらしい。

そもそも魚と人は違うし、魚は魚しか持っていない感覚器もあるので
魚が感じる経験を理解するのはとても難しい…
もしかしたら人が思うほどには苦痛を感じないのかもしれないし
精神的に追い詰められることも無いのかもしれない。
甲殻類も痛みを感じる受容体があるのだとか?
もしもそうなら魚の活き餌と同じく
動物福祉を考えて行動しなきゃならんと思うが…

魚はまだ人と同じ脊椎動物なので動物福祉の考えも理解できるけど
甲殻類ってどうなんだ?
苦痛を感じるだけの感覚があるのだろうか?
とりあえず痛みを感じる受容体があるのなら
魚の活き餌同様に扱ったほうがいい。

虫に関しては痛みを感じる神経がないそうだ。
例えば足を怪我してもその足をかばいながら歩くということをしない。
また子を育てるために自ら子の餌になるような利他的行動をとる種類もいる。
もしも痛みを感じて苦痛に思うなら
自らの命を投げ出すような行動はとれないと思うけど… 
それとも苦痛を凌駕する母性愛が虫にもあるのだろうか?

虫が痛みを感じないのはその体の小ささが原因らしい。
虫の神経細胞や繊維の大きさは哺乳類のものと同じ大きさだそう。
哺乳類では神経細胞の約半分は痛覚に関するもので虫の場合は体が小さすぎて
痛覚に関する神経細胞を持つ余裕がなかったからだそうな。
代わりに光や音、温度などの感覚神経を発達させたのだという…
虫はプログラムされた行動パターンを持っているので
寿命の短い虫にとっては多くのことを学習して記憶する必要もあまり無い。
おそらくこの行動様式も痛みを感じない体になった理由の一つだと思う。
故に僕は活き餌を使うなら虫類を優先的に使うのが良いかなぁと思う。
幸いにポリプテルスも虫を食べるしね。

しかし、痛みを感じないとはいえ虫も生き物。
意味無く無闇に命を奪っていいというわけではない。
虫にしろ甲殻類にしろ生き物なので
動物福祉の考えに当てはめて餌にすべきだと思う。

…と、まぁ書いてみたけど
改めて動物福祉からの考えはあくまで自分の価値観なので
人は人、自分は自分ってことです。
惑わされますな…






ウチで与えてる活餌の一例を紹介

  メダカ
小型のポリプテルスには
ちょうど食べやすいサイズ

たまに大量死するときが…
丁寧なストックが要求される
繁殖が容易なので
自分の好きなサイズのメダカを与えることも出来る
 
   
  金魚
サイズによって小赤や姉赤…等と呼ばれるが名前なんて気にしない
ビタミンB1破壊酵素をもってはいるがそれも気にしない
別に金魚だけが持ってるわけでもない
そんなに大した影響もないし
そもそも自身のビタミンB1を全て破壊するほど凶悪なものをもっているのなら
金魚そのものが生きていられないし
金魚そのものが破壊酵素では破壊しきれない栄養素をもっている
それよりもたまに細菌やウィルスで大量死するのでストックするときは病気に注意
 
   
  ジャイアントミルワーム
虫喰いのポリプテルスには好評
共食いや朽木に穴を開ける顎をもっているが
水に浸かるとすぐに息絶えるので何も問題はない
問題があるとするれば簡単に水に沈まないことか…
 
   
  レッドローチ
…まんまゴキブリである
Gに抵抗のない人なら良い餌になる
繁殖も容易
ただ、やっぱり水に沈まない
餌にするにはポリプテルスに浮上性の餌を慣れされておく必要がある
 
   
  ヨーロッパイエコオロギ
アロワナの餌としてお店に出回ってるので入手が容易
繁殖も容易
Gが駄目な人でもコレなら平気かもしれない
ただ、やっぱり沈まない…
とゆーか虫類の活き餌は基本沈まないものが多い
食べさせるには浮上性の餌に馴れさせておく必要あり