アイシングとは?
 ことば通り、冷却することです。冷却の効果を期待できる場面は色々ありますが、スポーツ現場で行われるアイシングは、次の3つに大別できます。
1.けがをした際の応急処置(RICES処置)の一つの手段
受傷部の痛みや腫れなどの炎症を抑え、二次的損傷を最小限に制限することが目的です。あくまでも医療機関での処置を受けるまでの手段です。また、症状の判断は、本人・家族を除き、法的資格が必要です
受傷部での組織的変化
 受傷部周辺では、組織細胞、血管、神経などの組織が損傷します。(一次的損傷)このとき、破壊された組織から血液や浸出液が漏れだし、損傷を受けた組織内や周辺に浸潤し、炎症反応を引き起こします(血腫が形成され、内圧が上昇)。損傷を免れた周辺の組織では、この炎症反応によって血液の流れが悪くなります。その結果、正常な組織に対する酸素の供給が絶たれ酸素不足で代謝変化が起こり、最悪の場合には細胞の壊死が起こり(二次的低酸素障害)、血腫がさらに拡大していきます。また、この炎症過程において細胞片を消化するために壊死した細胞から酵素が出されます。この酵素が正常な細胞に接近するとその細胞膜まで破壊し始め、更に細胞の壊死を招きます。(二次的酵素性損傷)このような損傷の拡大過程に対してアイシングを行うことにより次のような効果が得られます。
アイシングの効果
@血管収縮・毛細血管透過性の減少
 冷却による血管の収縮により、損傷部分周囲に流れる血流量が減少します。また、その組織及び組織周辺の毛細血管透過性も減少し、損傷を受けた組織周囲の内出血や浸出液が最小限に抑えられ、血腫についても、最小限に抑えることができます。その結果、二次的損傷の範囲も最小限に留めることができ、ひいては損傷部分の回復を早くすることができます。(損傷の程度にもよりますが、受傷直後の出血が最大で、安静を保てば約5分後までには自然に止血に向かいます。つまり、できるだけ早いアイシングの開始が重要です。)
A局所的体温低下による代謝の減少 
 冷却よる局部的な体温低下により、局部における新陳代謝が低下します。これにより血腫による低酸素所状態がおこっても、細胞の壊死を最小限に抑えることができます。また、壊死した細胞片を消化する酵素も、体温低下による活動制限により、正常な細胞の破壊の範囲を最小限に留めることができます。更に、新陳代謝を低下することにより、発痛物質の生成を減少させることにもつながります。
B疼痛対する麻酔作用
 冷却により、損傷部の感覚受容器の反応が鈍くなり(閾値の低下)、その結果疼痛を感じにくくなります。更に感覚神経の刺激伝達の遅延が起こり、中枢神経への感覚インパルスの減少が見られるようになります。その結果、疼痛が軽減します。また、疼痛の軽減により筋肉の緊張が減少し、正常部での血液循環が改善されます。
C筋活動の低下(筋肉細胞の活動の低下)
 冷却よる局部的な体温低下により、受傷部の筋肉の興奮と活動性を低下させ、さらに周囲の筋肉の緊張を減少させます。
2.体温上昇を抑えるための手段
 激しい運動中の熱量は、安静時の10倍以上といわれており、脱水や風・高温・多湿などの環境による発汗抑制によって起こる体温上昇(熱中症など)を抑えることを目的に行います。
熱中症は気温(室温)・湿度の高い環境であればいつでもどこでも起こりえます。体温上昇に注意!!
体調管理: 健康な状態と十分な睡眠
水分補給: 運動前数時間かけてなるべく多くの水分を少しずつ摂取、運動中は15〜20分おきに150〜300mlの水分を摂りましょう。競技終了後の水分補給も忘れずに。試合などが控えている際は、前の日の晩から水分を多めに摂取すると、熱痙攣などの予防にもなります。運動前後で体重の3%以上(例:体重が70キロある人は2.1キロの体重減)が水分で落ちる選手は、他の選手よりも頻繁に水分補給することが必要です。
体温の上昇は脳への影響も大きく思考力・集中力の低下にもつながり、けがの原因にもなりかねません。

熱けいれん
Heat Cramp
熱疲労
Heat Exhaustion
熱射病
Heat Stroke
原因 発汗などによる体内電解質の不足 体内の水分不足 水分不足からくる体温調節中枢機能障害
症状徴候 下腿、大腿、腹部などの筋けいれん 皮膚は青白く大量の発汗、体温は正常かやや高め、喉の乾き、倦怠感、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐 発汗なく乾燥した皮膚は赤く熱っぽい、体温上昇、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、意識障害、錯乱、昏睡、全身けいれん
処置法 薄めたスポーツドリンクなど 電解質を加えた飲み物の補給、痙攣が起きた部位の軽いストレッチとアイシング 涼しい場所へ移動させ、 衣服をゆるめて安静。水分補給を十分に行う 脈がとれる部位のアイシング 救急車を呼ぶ。待機の間、意識がある選手には水分補給を。また体温を下げるための全身アイシング。脈などをモニター
3.クールダウンの一つの手段
 スポーツなどの激しい運動をすると筋肉などからの熱の発生で体温が上昇し、それに伴い皮膚の血管が拡張し、血流量が増えます。また、競技によって負担の大きい関節や筋肉があり、疲労性の炎症を限局的に起す場合もあります。そして運動を終えた後、体はエネルギーを使って普段の体温に戻ろうとします。これらの上がった熱をアイシングによって下げることを目的に行います。
・健康な人の場合
 筋肉を動かすと血液中に乳酸が溜まり、その量は運動量に比例して増加します。乳酸が一定量蓄積されると筋肉の張りを生み痛みにつながります。運動後のアイシングは、その部分の張りや痛みを抑えると同時に、血管が収縮され一時的に血液の流れを悪くしますが、アイシング中止後しばらくすると血管は膨張し、血流が活性化して疲労物質の乳酸を勢いよく吸収するリバウンド効果が現れます。これはCIVD(冷却がもたらす血管拡張効果)といわれ、局所冷却によって一時的な新陳代謝の低下や血管の収縮をおこし、その後、局所冷却をやめたり温水につけるなどの加温を行ったりすることで、収縮させた血管を拡張し、新陳代謝が低下している組織への血流を増やし、疲労などの原因の乳酸やその他の老廃物を除去し、疲労回復を早める効果を狙ったものです。
 また筋力の強化のメカニズムは、
超回復理論によるもので、運動することで加わる筋繊維への外力により、筋繊維の破壊がおこることにより、その修復過程で元の筋繊維よりも強度が高く太い繊維に超回復がおこると考えられています。更に関節周囲では、動きや体重負荷によるストレスにより疲労性の炎症がおこります。これらに対しアイシングすることは、応急処置時と同様の効果が得られます。この結果、運動時の反復した過剰な外力による筋肉・関節など局所の組織の変性を早期に回復させることで、障害の予防にもつながります。特に成長期にある子供は、骨と筋肉の成長スピードのアンバランスによるストレスにより、過度の筋肉の緊張や痛みを発生し易い環境にあります。練習量の調整やストレッチなどによる柔軟性の獲得はもちろんですが、アイシングも積極的に行いましょう。
・けがの経験者や障害を持っている人の場合
 健康な人に比べ、筋肉の機能・柔軟性や関節の支持性・可動性の低下が考えられます。痛みや腫れがなくても自分の現状を十分把握して必要な局所に限定した念入りなアイシングを行いましょう。運動で痛みや腫れが出るようなら、アイシングだけに頼らず速効性の順に、第一にテーピング・サポーターによる保護、第二に技術的な内容の見直し(無理のない正しい技術の取得)、第三に筋力・可動・柔軟などのコンディション改善などの検討が重要です。
・リハビリテーション中の人の場合
 あくまでも、医療機関との相談しながらその指示のもとにスポーツをすることが大切です。また、加療期間中の人への対処は応急をのぞき医療行為にあたるため、法的な資格が必要となります。尚、ここで紹介する内容は一般的なものです。個々の状態に合わせた対応は、必ず医療機関と細かな打ち合せをしてください。
@現在可能な練習内容を選別し、現状にあわせた自分だけの練習メニューを作る
 完治するまでただ安静にしているのでは、健康な部分の機能まで衰退させるだけで、スポーツ現場への復帰は遅れるだけです。患部に影響しない練習を工夫しながら積極的にリハビリを行いましょう。また、影響が及ぶ可能性のある練習は、内容を工夫し強度・時間を考慮して行う必要があります。周囲の言動に惑わされず、自分のための練習を続ける強い意志を持ちましょう。
以下は、患部に影響が及ぶ可能性のある練習を行う時に行います。
A無感覚になるまでアイシングする
通常は10〜20分程度。詳しくは後記のアイシングの方法を参照してください。
B冷却後直ちに練習を開始する
冷却効果は長時間持続しないので速やかにしかも痛みのない範囲で慎重に行う。
C再びアイシング
効果が薄れてきたら再びアイシングをしてください。2回目以降は短いアイシングで効果が現れます。
D再び練習を開始する
状態を見ながら2〜3回を目安にC・Dを繰り返す。
E最後にアイシングを行い終了する。
※痛みをかばいながら我慢して周囲と同じ練習をすることは、かえってバランスを崩し、おかしな癖を身に付けてしまいます。少しでも早い復帰の為には、周囲に遠慮せず理解と協力を得て実現しましょう。

☆温度管理の簡単総復習(1)☆

 アイシングによる@「冷やす」・A「麻痺させる」・B「温める」といった感覚的作用とその効果については解っていただけたと思います。しかし、@とBは、まったく正反対の作用を期待して行われています。この作用を使い分けるのは、継続時間です。「冷やす」効果を期待するのであれば、間欠的に反復して行う必要があります。また「温める」効果を期待するのであれば、冷やして温めるといった温度差を利用してCIVDの効果を利用する必要があります。
入浴後の湯冷めは、常温で冷えの状態になるまで保温を惰った際におこります。湯上り前の掛水や汗をよく拭いて早めに服を着ることが大切です。スポーツ後も同様に、汗をよく拭き、汗が引いてしまう前に早めに着替えを済ませましょう。体調管理も重要です。

アイシングの方法
1.基本編
 なるべく早く開始してください。時間がかかるほど、効果は低くなります。タイミングについては、応用編を参照してください。尚、冷却時間はあくまでも目安で、次の感覚的変化が重要です。
1.冷たい⇒痛い(「ジーン」とする感覚) 
2.暖かい(感覚的に熱く感じることもある)
3.チクチクする(針で突かれるような感覚) 
4.触った感覚がなくなる(皮膚感覚の麻痺や麻酔をした感覚)
 この時点がアイシングを止める基準となります。約20分前後が目安です。最初からチクチクしてしまい短い時間で中断してしまうような強い冷却(冷凍庫‐18℃から取り出したばかりの冷却材)は、皮膚表面だけの浅い冷却で終わってしまい、深部までその効果を浸透できないだけでなく、凍傷の原因にもなりかねません。高地の河川に手を浸けた経験があればわかると思いますが、局部を持続して冷却するには、0℃以下の極端な低温は必要ありません。もし冷えすぎるなら緩衝用に冷たく濡らしたタオルなどをあてるなど工夫して行いましょう。
  (具体的な方法については、
「冷却材の用意」を参照して下さい。)

2.応用編
・けがをした際の応急処置(RCES処置)時
 RICES処置とは5つの英語の頭文字からとったもので、すぐにスポーツを中断し開始することが基本です。ここで紹介する内容は、医療機関での処置を受けるまでの手段です。あくまでも症状を軽減し、2次的悪化を防ぐための応急処置で、けがが治るわけではありません。処置した状態を維持したまま速やかに医療機関に搬送してください。(けがの状態の判断は、本人・家族を除き、法的資格が必要です。)また、一般的には受傷後24〜72時間継続すると言われていますが、受傷場所や程度によって判断が必要で、継続する時間については、あくまで医療機関が決定することです。十分相談しながら継続して下さい。
REST: レスト(安静にする)
 受傷後すぐに運動を中止し、痛みが薄らぐ楽な体位(基本的には寝転がる)になる。
ICING: アイシング(冷やす)
 受傷後すぐに基本編のアイシングを行いますが、皮下組織が厚い大きな筋肉では、少し長めに行います。アイシングは医療機関での処置を受けるまで継続する必要がありますが、凍傷の危険性を避けるため、基本編のアイシングの終了後1〜2時間ごとを目安にCIVD(冷却がもたらす血管拡張効果)が表われる前にアイシングを再開する間欠的な処置を続けます。継続時間は、48時間或いは72時間という意見はありますが、そのような判断が必要になる前に医療機関で処置を受けましょう。
またキズがある場合は、清潔さを保つことを心がけましょう。(出血が多ければ止血が優先です。)
COMPRESSION: コンプレッション(圧迫する)
 適度な物理的な圧迫(外圧)は、毛細血管や組織の通常の機能には影響を及ぼさず、腫れの形成の抑制とすでに形成された腫れの原因物質の再吸収を促す助けとなります。またその効果は、腫れが起こり始める受傷直後から、腫れが存在する間は有効に作用します。つまり、圧迫は損傷発生後のできるだけ早い時期に適用することが重要です。圧迫には伸縮包帯などを使ったり、より効果を期待するため局部にスポンジを当てたりすることで行います。ただし、先のアイシングの効果を妨げないように十分水分(出来れば冷たい水)を湿らせて使用します。強すぎる圧迫は、痛みを増加させたり、痺れ感がでたりするだけでなく、血流や神経の機能を損なう危険性(阻血性拘縮・神経マヒ)もあり、継続的に痛み・痺れ・圧迫した場所より心臓から遠い部分のむくみや皮膚の色(青紫は要注意)を監視しながら行う必要があります。
ELEVATION: エレベーション(高く上げる)
 傷めた箇所を心臓より高い位置に保持します。これは、受傷部の毛細血管の圧を下げることで出血や浸出液をコントロールし、腫脹の発生を軽減します。また挙上は、ズキズキと脈を打つような痛みに対しても有効です。ただし、その姿勢を脱力した状態で安定して保てることが条件です。手なら上向きに寝て手を立て、足なら上向きに寝て台に乗せるなど、心臓より高い位置を保持しましょう。
STABLIZATION: スタビライゼーション(固定する)
 固定の目的は、受傷部周辺の筋肉がリラックスすることができよう、受傷部に十分な支持を与えることで、圧迫や安静と区別することが必要です。痛みに対する防御反応は、損傷部周辺の筋の収縮やけいれんを起こして損傷部位を安定させ、痛みからの逃避やさらなる損傷を防ごうとするものですが、これは更に筋肉の緊張を引き起こし、それによって痛みが増すという悪循環を繰り返すことになります。したがって、早期の固定は筋肉の緊張を和らげ、痛み⇒緊張⇒痛みという循環を軽減します。また、移動の際の痛みも軽減することができます。
受傷部の固定を目的に行う行為は、医療行為(法的資格が必要)との区別が難しく、応急処置に含めない場合もあります。しかし、身近にある物(ハンカチ・スカーフ・ベルト・ストッキング・雑誌など)を使って行うことは何ら問題ないでしょう。けがをした人の苦痛を考えれば、積極的に行うことをお勧めします。
・クールダウン時
 スポーツ終了後は、基本編のアイシングを行います。ただし、急激な運動の中止はかえって疲労の蓄積を招きます。軽い有酸素運動を中心に、全身の緊張の緩和・機能回復やバランス調整を行ったあとに行ってください。アイシング終了後、CIVD(冷却がもたらす血管拡張効果)を利用して部分的なストレッチや軽い自動運動などを行うと疲労の回復や障害予防につながります。

冷却材の用意
 現在では使用目的に合わせた色々な冷却材が市販されています。コストパフォーマンスと大きさや重さなどで種類によって使用範囲が限定されるということを除けば何の問題もありません。ここでは、煩わしいところはあるけれども廉価で手軽に出きる方法を紹介します。
1.氷嚢
 市販されている氷嚢やビニール袋にクラッシュアイスを入れ、中の空気を抜いて利用します。変形が容易で受傷部への密着性も高く、無だな大きさと重さを量で調整できます。クラッシュアイスが基本ですが、粒が大きな氷(ブロック状など)を使用するときは、少量の水を入れて良く混ぜ合わせて角を取ることで、氷間の空間を埋め、密着性を高め、受傷部への当たりを弱め、空気を抜いて利用します。ビニール袋は皮膚への刺激が強すぎることもあるので、その際は冷たく濡らしたタオル類を当てる工夫をしましょう。
2.コールド・スプレー(単独ではRICES処置・クールダウンには不向き)
 比較的よく使われるものです。表層部を冷やし、痛みを麻痺させるには効果的ですが、深部まで冷やすことは困難です。また近距離で長時間使用してしまい、凍傷をおこしてしまう場合があります。注意書きをよく読んで使用しましょう。次のアイス・タオルとの併用は有効です。
3.アイス・タオル
 部位に応じて患部全体を覆うことのできる大きさのタオルを用意し、冷たい水の中にタオルを浸しておいて使用します。冷却の持続時間を長くするには、タオルを交換しながら行うと有効です。背部や大腿部などの大きな部位に使うことができます。氷がない場合は、コールド・スプレーを併用すると冷却温度を下げることができます。当てた濡れタオルの上に噴射し、凍る直前で中止しながら時間をあけて繰り返しましょう。
4.アイス・バス(挙上不可の為、応急処置には不向き)
 浴槽またはバケツに水を張り、その中に氷を入れて氷水(約4゚C)を作ります。5〜6分間患部をつけます。アイス・バスは、その特性から足首、膝、肘、手といった末梢に使いやすいものです。タオルを浸して同時に使用すれば、範囲を広げることもできます。
5.アイス・カップ(圧迫不可の為、応急処置には不向き)
 紙コップに半分ほどの水を入れて凍らせ、底を切り取り、口を内側に折って使用します。患部の周囲からゆっくりとやさしく円を描くように動かしてマッサージをします。皮膚がピンク色になり、さわっても感覚がなくなれば、それ以上冷やす必要はありません。約10分前後が目安です。氷を直接皮膚に当てるため速効性がありますが、一点に止めすぎないよう注意してください。

氷の飛び出しによる落下を避け、安定した圧を加えながらマッサージをすることができます。溶け出した水分をふき取りながら行って下さい。終了後温めると効果的です。
(入浴等)時間に余裕があれば数回繰り返し、最後に温めて終了してください。

※アイシングは、チームとして対応するのが理想です。みんなで知識を共有しましょう。ただし、冷却刺激に過敏な人や循環器障害(心臓疾患・血行障害など)のある人は、主治医と相談してください。
また、アイシングは体調管理の一手段でしかありません。精神的・技術的・肉体的な管理や食事・睡眠などの生活習慣の管理も重要です。けがを予防し健康にスポーツを行いましょう

☆温度管理の簡単総復習(2)☆

捻挫や打撲は軽く見られがちですが、皮膚の下に見えない傷ができたことを想像してください。大袈裟だと思わずに程度に関係なくアイシングすることが重要です。擦り傷でも1日で消えてなくなる傷はありません。あとで後悔しても手遅れです。
医療機関や薬局で購入する冷感シップ薬は、水分気化により温度を下げる作用と鎮痛・消炎剤による血管収縮などの抗炎症作用があります。薬効については、臨床データにより検証されており疑う余地はありませんが、使用に際しての指導・管理には法的資格が必要で、資格のないものが第三者に対して使用したり、使用を勧めたりすることはできません。最近では、薬効を排除して水分気化により温度を下げる効果だけを持たせた冷却剤(ひえピタクールなど)も市販されています。これは、だれでも自由に使用できます。どちらを使用するにしても、スポーツ現場で冷却効果を期待して使用するのであれば、水分気化よりも冷却効果の高い氷・冷水・アイス・パックを利用する方が有効でしょう。温感シップ薬には、血管を拡張させる薬剤(トウガラシエキスetc.)が含まれています。使用上の注意をよく読んで使用目的と間違えのないよう注意してください。
かぜをひいた時に使用する氷まくら(ゴム製やソフトタイプのアイスノンなど)も流用できますが、大きさ重さから考えて使用できる範囲は限定されます。当てる部分の表面の凹凸が少なく広い面積への使用が向いているでしょう。ただし、アイシングの基本編にしたがい冷やしすぎには注意してください。
家庭で足や手をちょっとぶつけたときなどは、さしみなどを買った際に付いてくる保冷材などを凍らせておけば、冷たく濡らしたハンカチなどをあて、ハンカチやストッキングで包んで縛り付け、アイシングの基本編にしたがって行えば青あざも小さくて済みます。捨てるストッキングは、適当な長さに切って保管し、シップ薬の剥がれや包帯のずれなどが気になるときにも使用できるので便利です。