クレアチンとクレアチンリン酸の生成


アミノ酸分解の最初の段階はアミノ基の除去です。これには次の3つの経路があります。
@ アミノ基転移:     アミノ酸のアミノ基をα-ケトグルタル酸などのアミノ基受容体に転移し、α-ケト酸を生じます。アミノ基は、最終的にグルタミン酸に集められます。
A 酸化的脱アミノ: グルタミン酸はミトコンドリアで酸化的に脱アミノされ、α-ケトグルタル酸になります。α-ケトグルタル酸は、TCA回路の一員です。グルタミン酸の酸化的脱アミノによって生じたアンモニアは、生体に有害であるため、尿素回路によって無毒な尿素に変換されます
B その他の
 脱アミノ機構:
アミノ酸オキシダーゼによりアンモニアが遊離すると共に、過酸化水素を生じます。


 アミノ基転移・酸化的脱アミノによるアミノ酸の分解の他に、以下のようなクレアチン生成による分解があります。


 クレアチンリン酸は、代謝回転の激しい筋肉や神経細胞において、ATPを再生産するための「高エネルギー化合物の貯蔵物質」です。休息中は、ATP濃度が高いとクレアチンリン酸の合成が進み,運動中はATPが分解されADP(アデノシン二リン酸)を生じると、酵素クレアチンキナーゼの働きで、クレアチンリン酸とADPからすばやくATPが再合成され供給されます。
クレアチンとスポーツパフォーマンス
 筋収縮の直接のエネルギー源はATP(アデノシン三リン酸)です。この供給には、好気時のグリコーゲン・脂肪酸とタンパク質(BACC)による呼吸鎖からの供給と、素早いATP産生が可能な嫌気時のグリコーゲンとクレアチン酸からの供給があります。
 しかし、筋収縮を嫌気時のATP供給だけでまかなおうとすると、筋肉内のそれぞれの貯蔵量に左右されます。そこで、筋肉内のグリコーゲンの貯蔵量(約245g)を高めるために、グリコローディングという手法が取られています。一方、クレアチン酸を産生するクレアチンの筋線維内への取り込みは、インスリンによって活性化されることから、糖質と組み合わせて摂取すると、より大きな効果が得られます。したがって、食事直後の血糖の上がるタイミングに摂取するのが貯蔵量増加につながると考えられます。
クレアチンの摂取
筋肉内に貯蔵できるクレアチン酸の量には限界があり、多量のクレアチンを摂取しても、分解されたクレアチニンの血中濃度が上昇し、結果的に腎臓や心臓に負担をかけることも考えられます。実際に、長期間クレアチンを常用していた選手が、腎機能障害を起こしたという報告や、心不全で死亡したという報告も出てきています。また、長期間にわたって多量に摂取すると、食品からの吸収や、アミノ酸から合成する機能を低下させる恐れもあります。やみくもな摂取は避け、摂取量を注意しながら、目的にあわせて5〜7日の一期間に絞った短期間の使用を心がけましょう。